気持ちを上手に伝えるには?3つのステップでアサーティブな自己表現に!
あなたは、「自分の気持ちを上手く伝えられない」「相手と衝突してしまう」「遠慮してストレスを溜めてしまう」等の悩みを抱えていませんか?
「もっとスムーズに自分の意見や気持ちを言いたい」と思いませんか?「もっと相手と分かり合いたい」と願いませんか?
過去の記事では3つの自己表現のタイプについてご紹介し、アサーティブな自己表現の大切さをお伝えしてきました。
この記事では、実際に、アサーティブな自己表現を行うためのステップについて、ご紹介します。
3つの自己表現のタイプ
まずは3つの自己表現について、概要を振り返ります。
①非主張的(ノンアサーティブ)自己表現
- 自分よりも他者を優先し、自分を後回しにする自己表現。
- 自分の思いを引っ込めてしまい、状況や周囲に流されてしまいがちな自己表現のタイプ。
- 心理的負担が蓄積し、メンタル不全にもつながる懸念。
②攻撃的(アグレッシブ)自己表現
- 自分のことだけをまず考えて行動し、時には他者を踏みにじることにもなる自己表現。
- ノンアサーティブとは反対のタイプ。
- 孤立感、後悔、イライラなどにより葛藤する可能性がある。
※ ノンアサーティブとアグレッシブは凹凸関係で、互いの悪い特性がより顕著になる。
③アサーティブな自己表現
- 自分のことを第一に考えつつも、他者にも配慮する自己表現。
- 前の①②の間のちょうどよいバランス。互いにストレスのない爽やかな自己表現。
誰もが、どのタイプにもなり得る
- 誰もが、時にアグレッシブ、時にノンアサーティブ、時にアサーティブと様々な面を持っており、その時々の場面、相手、生じている事柄などで変化している。
- アサーティブな自己表現を行うには、「あなたがどのような場面、人、事柄の時に、どのような自己表現を行いやすいか」について、自己理解を深めておくことが大切。
※あなたの特徴をチェックするために、ぜひ過去記事をご覧ください。
意識と行動をアサーティブにすることが大切
では、どうしたら、アサーティブな自己表現をスムーズに行うことができるのでしょうか?
あなたは、話す内容、話す時の表情や態度、話すタイミングなど、「伝え方のノウハウについて知りたい!」という気持ちを持っているかもしれません。
伝え方はもちろん大切です。しかし、伝え方に関するノウハウと同じくらい大切なことがあります。
それは、あなた自身の考え方をアサーティブにすることです。
言い方を変えると「上辺だけのノウハウでは、本当の意味でアサーティブなコミュニケーションを行うことはできない」と私は思っています。意識と行動を両立させる必要があります。
アサーティブな自己表現のステップ
ここからは、アサーティブな自己表現を行うためのステップについてお話しします。
次の書籍を参考にしつつも、15年以上職場のメンタルヘルスに関するカウンセリングやセミナーを続けてきた経験から、より実践的にお伝えしていきます。
- 「アサーション入門」(平木典子,講談社現代新書、2016)
- 「改訂版 アサーション・トレーニング ―さわやかな〈自己表現〉のために」(平木典子、金子書房、2009)
コミュニケーションは伝え手と受けての2つの場面がある
まず、大前提として、コミュニケーションは相手との双方向のものです。したがって、最初はどちらかが「伝え手」で、どちらかが「受け手」になります。
ですので、自己表現をする機会は、①こちらから伝える場面と、②相手から伝えられたことを受けた上で伝え返すこと、すなわち、先手と後手の大きく2つの場面になることを押さえておきましょう。
アサーティブな自己表現を行うための3つのステップ
いよいよ、アサーティブな自己表現を行うためのステップです。
先程は、意識と行動を両立させるなどと、難しいことを言いましたが、実は、この3つのステップを意識して実行するだけで大丈夫なんです。
- 自分の気持ちや考え方を確かめる
- 正直に言語化する
- 相手の反応を受け止める
さらに、先手、後手、どちらのパターンでも同じステップです。とってもシンプルですよね。
ここから3つのステップについて、ポイント具体的に説明します。ぜひ、取り入れていただければ、嬉しいです。
①自分の気持ちや考えを確かめる
すべてはここが出発点です。自分の気持ちが分からないと、アサーションのスタートラインにも立てません。
過去記事でも触れていますが、自分がどうしたいのか?今どう感じているのか?
- 例えば、嬉しい、悲しい、不安、緊張などの感情
- 例えば、相手にこうしてほしい、自分はこれを望んでいるなどの思考 など。
まずは自分の気持ちにしっかりと向き合います。それが、綺麗な感情や思考じゃなかったとしても…。
もし、自分の気持ちに目を向けず、「相手はどんな気持ちだろう?」「どうしたら相手を納得させられるか?」などと、相手にばかり気をとられると、ノンアサーティブやアグレッシブな自己表現になる傾向が強まってしまうからです。
でも、意外と、自分の気持ちや考えが分からない時ってありませんか? 「何で自分はこれを相手に伝えたいのか?」「何か気持ちがモヤモヤしているけど、どう表していいか分からない」とか…
慣れるまでは、すぐに自分の気持ちを整理することは難しいかもしれません。
特に、相手から話しかけられる場合、つまり受け手(後手)になった場合は、事前に準備が出きるわけでもないので、会話の一瞬の中で、気持ちを整理しないといけません。
それでも日頃から意識する習慣をつけることで、必ず成果は出てきます。
大切なのは、言葉にできない曖昧な気持ちや、「嬉しくもあり、寂しくもある」などの相反する感情、ジレンマに気づくことです。
「難しそう…」と思ったあなた、自分が伝え手(先手)になる時であれば、自分の気持ちや考えを確かめておく時間を取りやすいので、まずはそこから始めてみましょう。
②正直に言語化する
次に、①で確かめた自分の感情や考えを、正直に、率直に伝えるようにします。
このとき、自分の語彙や知識、経験などを総動員して、もっとも自分の気持ちを適切に伝えられる言葉を用いるわけです。
私はあまり語彙が豊かでないので、変に難しい熟語などを用いると、言いたいこととズレてしまいます。なので、できる限り具体的に伝えるようにしています。
ここで、「えっ?正直に伝えたら、ダメな時もあるでしょ?」とか、「どうしたいか、自分の気持ちが決まっていない場合もある…」と、あなたは思いませんでしたか?
例えば、相手の強引な誘いに対して、「何でそんな誘い方をするんだ?」と不快に感じた時、「何でそんな誘いをすんだ!」という言い方は正直ではありますが、相手を非難するアグレッシブな表現です。アサーティブな表現であれば、「急に強く誘われて正直困惑しているのだけど…理由を教えてくれない?」といった、「困惑」という自分の気持ちを素直に表現するイメージです。
また、誘われたことに対して、付き合うか付き合わないか迷ってしまう時、自分の気持ちが決まらない時は「正直、私自身も迷っていて、どうしたら良いかすぐに決められない。誘う理由を教えてほしい」といった表現になるわけです。「わからない」「迷っている」という自分の気持ちを素直を表現するのです。
つまり、相手がどうこうというのは、置いておいて、「自分の気持ちは〜なんだ」というスタンスに集中するのがポイントです。
①②を事例で考えてみましょう
次の場面を想像してください。
あなたは、悩み事を抱えており、ずっと同僚のAさんに相談したいと思っていました。意を決して、今日、仕事後の食事に誘うことにしました。でも、Aさんはとても忙しそうで、迷惑かも?とあなたは心配しています。
あなたはどのように声をかけますか?
この時、「Aさんにどう思われるか?」の思考に引っ張られてしまうと… 遠慮の気持ちから「もしよかったら今日食事でもどう?あっ、大した要件じゃないから、忙しければ全然断ってくれていいけど」という言い方をするかもしれません。これは、ノンアサーティブな自己表現です。
Aさんの気分を害することはないと思います。しかし、もし断られた場合、あなたは「もっとしっかり誘えばよかった…相談できなかった…」などど、自分の気持ちを抑えたことを後悔する可能性があるでしょう。
反対に、「Aさんは忙しそうだけど、絶対に話を聞いてもらわなきゃ困る。何とか説得しよう!」と相手をコントロールしようとすると、アグレッシブな自己表現になる可能性が高まります。
Aさんの了承を取り付けても、Aさんが心から付き合ってくれていなかったら、あまりいい雰囲気で話を聞いてもらえないかもしれません。
アサーティブな自己表現は、「Aさんは忙しそうだから、迷惑はかけられない。でも、私も切羽詰まってるから、何とか時間を作ってもらいたい」という、正直な自分の気持ちに向き合うことから始めます。
また、「Aさんの気持ちは聞いてみないと分からない。私が想像するよりも忙しいかもしれないし、意外と大丈夫かもしれない」と、相手の事情を勝手に決めつけないこともポイントです。
すると、表現方法は「実は、相談したい方があって…。Aさんは忙しそうだから、迷惑かも?と思ったんだけど、ちょっと私も真剣に悩んでいることがあって…。今日時間をもらうことは可能かな?」といった内容になると思います。
③相手の反応を受け止める
アサーティブな自己表現は「自分も相手も大切にする」事が大前提です。つまり、相手の事情や意見に耳を傾ける姿勢が必要です。
上の事例で言えば、忙しそうに見えるAさんは、あくまであなたの主観によります。実際のことは、Aさんでないと分からないのです。
それを、こちらが勝手に、「Aさんは忙しいはずだ」とか、反対に「いや、大した事ないだろう」などと決めつける事は、アサーティブな考え方を阻害し、ノンアサーティブやアグレッシブな態度に陥ってしまう原因となります。相手の事情は相手に教えてもらうしかないのです。
①②は、あくまで自分の気持ちを素直に伝えるステップであり、その結果、相手がどう感じ、どう考えるのか、それは相手の自由であり、権利なのです。
こちらが自己表現をした上で、相手の自己表現を素直に尊重して聞く、そして、再度自分の気持ちを表現するという双方向コミュニケーションが、アサーションの醍醐味です。
もし、お互いがアサーティブな考え方を持っていれば、先ほどの事例でAさんが忙しい状況だったとしても、「仕事終わりに1時間だけ」「明日ならゆっくり話せる」「Aさんに今日ゆっくり時間をもらうかわりに、明日仕事を手伝う」などの、当初、あなたが想定しなかった結果に、2人でたどり着く可能性もあるのです。
アサーティブはあくまで互いを大切にするものであって、自分の望む結果に相手を誘導するものではないという事です。
今日はアサーティブな自己表現を行うための3つのステップをご紹介しました。
- 自分の気持ちや考え方を確かめる
- 正直に言語化する
- 相手の反応を受け止める
そして、3つのステップを進める上でのポイントは次の通りです。
- ステップ①②では、相手がどうこうというのは置いておいて、「自分の気持ちは〜なんだ」というスタンスに集中するのがポイント。
- ステップ ①②は、あくまで自分の気持ちを素直に伝えるステップである。その結果、相手がどう感じ、どう考えるのか、それは相手の自由であり、権利。
- こちらが自己表現をした上で、相手の自己表現を素直に尊重して聞く、そして、再度自分の気持ちを表現するという双方向コミュニケーションが、アサーションの醍醐味(ステップ①〜③のつながり)。
とってもシンプルなので、ぜひ取り入れてみてください。1つずつでも、習慣にできると、きっと、見違えるように、コミュニケーションや人間関係が変わっていきます。
具体的にお伝えしようとして頑張った結果、結構な文量になってしまいましたが、少しでもあなたの生活に役立てていただければ、幸いです。
参考図書
改訂版 アサーション・トレーニング ―さわやかな〈自己表現〉のために
- 作者: 平木典子
- 出版社/メーカー: 金子書房
- 発売日: 2009/09/16
- メディア: 単行本
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アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法 (講談社現代新書)
- 作者: 平木典子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 新書
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